1. 「本物」を証明したくて、迷宮の扉を開けた。
生成AIが「完璧な虚構」を1秒で作り出す時代。 私が運営する「Photossier(フォトシア)」が守りぬきたいのは、その場の光、モデルの体温、そして「そこに私がいて、シャッターを切った」という動かぬ事実です。
そのために、画像の家系図とも言える規格「C2PA(Content Credentials)」の導入を決めました。でも、これが想像を絶する「設定の迷宮」の入り口だったんです。2026年2月25日、ソニーお客様ご相談窓口の担当、小野さんとの長い長い往復書簡が幕を開けました。
2. C2PA(Content Credentials)とは?
C2PA(シー・ツー・ピー・エー)は、ひとことで言うと、「写真のための魔法のパスポート」です。
みんなが旅行に行くときに持つパスポートには、「名前」や「どこの国の人か」が書いてあって、悪い人が嘘をつけないようになっていますよね。それと同じことが写真でもできるようになります。
- いつ、どこで撮ったのか?
- どのカメラで撮ったのか?
- 誰がシャッターを押したのか?
- あとから嘘をついて描き変えていないか?
今の世の中、AIを使って本物そっくりのニセモノ写真を作るのがとても簡単になりました。でも、この「魔法のパスポート」がついていれば、これはAIが作ったウソじゃなくて、私がちゃんとカメラを持って、その場所に立って撮った本物だよ!」と、世界中の人に証明できるんです。
3. 【2/25】最初の壁:ライセンスは入った、でも「サーバー日時」が取れない
最初は「マニュアル通りにやればすぐ終わる」と高を括っていました。でも、最初からつまずいたんです。「サーバー日時」が取得できない。カメラの中では証明書を認識しているのに、肝心の署名が始まらない……。
📧 小野さんより (2/25 13:11)
「赤木様、まずは『サーバー日時を取得する』を試してみてください。あ、ちなみにHEIF形式には対応していないので、そこだけは注意してくださいね。」
📩 赤木 (2/25 20:44) 「小野様、ガイド通りやってますが日時が入力できません。スマホアプリ(Creators’ App)とはバッチリ繋がっているはずなんですが……」

この時の私は、まだ「スマホと繋がっていれば万全」だと信じて疑っていませんでした。
4. 【2/27】盲点:スマホ経由じゃダメだった!?
ここで最初の衝撃。小野さんからの回答は、予想の斜め上をいくものでした。
📧 小野さんより (2/27 20:18) 「サーバー日時の取得は、スマホアプリ経由じゃダメなんです。カメラ本体を直接、Wi-Fiに繋いでください。」
赤木の心の声:「え、そっち!? アプリと繋いでる意味ないじゃん!(笑)」 速攻でWi-Fiに直結。ようやく日時が取得できました。でも、本当の戦いはここからでした。
5. 【3/4】衝撃:「DISPボタン」一つでアイコンが消えていた
「よし、これで署名されるはず!」と意気揚々とシャッターを切る。……が、出ない。ガイドラインにあるはずの「Sig cr」アイコンが、どこを探しても見当たらない。
半べそで送った操作動画。それを見た小野さんからの返信に、私は膝から崩れ落ちました。
📧 小野さんより (3/4 19:04) 「動画を見ましたが……赤木様、画面表示が『情報表示なし』になっていませんか? DISPボタンをポチッと押して、画面を切り替えてみてください。」
……出た。出ました、アイコン。 設定は完璧に生きていたんです。ただ、私が「表示オフ」にしていただけだった。小野さん、よくあの動画のわずかな情報から気づいてくれました。プロの眼力、恐るべしです。

6. 【3/13-16】最後の敵:愛用していた「Lightroom」という罠
アイコンは出た。カメラ内でも確認できた。でも、自分のPCでチェックすると「署名なし」という非情な判定。最後はソニーの専門部署まで動いていただき、実データを解析した結果……。
📧 小野さんより (3/16 18:31) 「画像を確認したところ、Lightroom Classicで編集が加わっていますね。 これだと署名が消えてしまいます。一度、無加工のオリジナルデータで試してもらえますか?」
📩 赤木 (3/16 23:22) 「……オリジナルなら、反応しました! ついに、ついに解決です!!」

C2PAは「撮影した瞬間の純粋な記録」を証明するもの。対応していない現像ソフトを通した瞬間に、その「信頼の鎖」が途切れてしまっていたんです。これ、現像が当たり前のプロにとっては最大の落とし穴かもしれません。

7. なぜ「本物(真正性)」が大事なの?(心のしるし)
「本物であること(真正性)」にこだわる理由は、「信じてもらうため」です。
たとえば、お母さんが作ってくれたハンバーグと、工場でロボットが作ったハンバーグ、どっちが「特別」に感じるかな? お母さんが「あなたのために」一生懸命作ってくれた本物の料理だからこそ、おいしいし、嬉しいですよね。
写真も同じです。
- 「私にしか撮れない」という自信(専門性) 何年も練習して、光と影の勉強をして、やっと撮れた一枚。それはAIが適当に作った画像とは、価値が全然違います。
- 「嘘をつかない」という約束(信頼性) もし写真家がニセモノばかり見せていたら、誰も信じてくれなくなります。「この人の写真は本物だ」と信じてもらえるからこそ、みんなが写真を見て感動してくれるんです。
だから私は、カメラの中に「これは本物だよ!」という証拠を刻むために、一生懸命頑張っているんです。
8. おわりに:赤木の情熱は冷めない。成功するまで、やり遂げる。
2月25日から3月16日まで、約20日間。小野さん、本当にありがとうございました。 キツかったけれど、この泥臭いやり取りのすべてが、私の写真に対する「誠実さ」の積み重ねだと思っています。
現在は、署名に「赤木友厚」という私の名前を刻む方法を小野さんに質問中。そして、動画機の FX3 用にもライセンスを購入しました。またここから一ヶ月かかるかもしれませんが(笑)、私は絶対に諦めません。
多分今現在、こんな面倒なことをやっているフォトグラファーはいないかもしれない。私は、この「Sig cr」という小さな紋章を背負って、これからもシャッターを切り続けます(笑)
