みなさん、こんにちは!
エドガー・ドガ(Edgar Degas)が19世紀後半に描いた「入浴後」シリーズ(After the Bath)、見たことありますか? 特に、背中を向けて一生懸命身体を拭いている女性の絵画群は、それまでの「鑑賞者に見せるための綺麗な裸婦像」という常識をガラリと変えちゃった傑作なんです。
今回は、ドガの傑作『浴後、身体を拭く女』にインスピレーションを受け、フォトグラファーの赤木友厚が撮影した現代の「芸術ヌード写真」について解説していきます!
ドガが絵画に込めた「写意的視点」と、写真表現で展開するアプローチの深い関係を、わかりやすく紐解いていきましょう!
1. ドガの「鍵穴の視点」と写真のディープな関係
ドガ自身、自分の裸婦画についてこんな感じの有名な言葉を残しています。
「これまでは鑑賞者を意識したポーズばかりだったけど、私が描く女性たちは自分の身体のことしか考えていない……まるで鍵穴からコソッと覗いているようなものだよ」
この「覗き見(ヴォワイエリズム)」の感覚って、実は当時ブームになりつつあった「写真」という新しいメディアと深〜く関わっているんです。
学術論文でもこんな風に論じられています!
- 「見られている意識なし」の美学: Edgar Degas, Photography and Voyeurism (1990) という論文では、ドガの構図は写真の登場によって生まれた「カメラを意識していない被写体」という新しい視覚体験を敏感に絵画に取り込んだ結果だと分析されています 。
- 観察者はどこにいる?: The Aesthetics of Presence: Looking at Degas’s Bathers (2010) では、鑑賞者をあえて「物陰から覗き見る立場」に置くことで、画面の中の絶妙な緊張感を作り出していると論じられているんです 。
- ネガや連写の効果: ドガは連続写真の「動きの一瞬」を観察したり 、乾板写真のネガ特有のトーンをパステル画で表現しようとしたりしていたとも言われています 。
2. ドガの原画と撮影した作品の共通点を比べてみよう
ドガの『浴後、身体を拭く女』と、私が実際に撮影した写真作品を並べてみると、驚くほど共通点が見えてきます。


| 比較するポイント | ドガ『浴後、身体を拭く女』 | 赤木友厚が撮影した作品 |
| モデルのポーズ | 背を向け、首や肩を自分で拭く姿勢 | 背を向け、首元や頭に手を置く姿勢 |
| モデルの意識 | 見られていることを完全に無視! | カメラを意識しない無自覚な佇まい |
| カメラ(視線)の高さ | ちょっと上から見下ろすハイアングル | 俯瞰(高い視点)から捉えたアングル |
| 手前のフレーム | 手前の家具や布越しの覗き見感 | 画面の端にある黒い壁・ドアの影 |
| ライティング | 明暗のメリハリによる立体感 | 一方向からのシャープな光 |
「見られていることを知らない」からこそ出るリアルさ
どちらの作品も、モデルさんが「ハイ、ポーズ!」とカメラ目線を作っていませんよね。自分ひとりのプライベートな時間に没頭しているからこそ、見ている私たちは「うわ、鍵穴から覗いちゃってる……!」という甘美な緊張感を味わえるわけです。
さらに、私が撮影したカットでは、写真の端っこに黒いフレーム(遮蔽物)をわざとドカンと入れることで、「物陰からこっそり撮った感」がグッと増しています。
3. 彫刻のように描く「背骨の美」
ライティングを組んで撮影したこのカットでは、上や横から差し込む一方向の強い光(レンブラントライティング調)が効果的に使われています。
- 美しいシャドウのグラデーション: 肩甲骨から背骨、腰のくびれにかけて、筋肉の起伏が陰影によってくっきりと浮かび上がっています。
- 直線と曲線の対比: 椅子や床のピンとした直線と、女性のしなやかなボディラインの対比が本当にきれいですよね。
ドガがパステルの粉を何度も重ねて光を表現したように、私も撮影においてハイライトから影までのトーンを滑らかに繋ぐことで、モノクロなのに肌の温もりまで伝わってくるような質感を見事に生み出しています。

4. ちょっと脱線!写真と絵画の小話
ドガの描く女性も、私が撮影したモデルさんも、一生懸命背中に手を伸ばして身体を拭いたり整えたりしていますよね。
こうして画家の観察眼や写真家のレンズによって緻密に再現されたリアリティあふれる姿を見ていると、思わず「この描写の細やかさ、ドガ(画)が過ぎるぞ!」と唸っちゃいます。
あと、この「隠れて覗き見る」スリル。現代で例えるなら、特撮ヒーローの「極秘変身シーン」を物陰からうっかり目撃しちゃって、『仮面ライダーガッチャード』の錬金術師たちに記憶を消去されそうになるあの気まずさにちょっと似ていませんか?(「見たな!」「あ、いや、変身ポーズがあまりに美しかったもので……」みたいな笑)。
なお、19世紀のパリでドガが暗室にこもって扱っていた写真薬液のにおいや危険性について語り出すと夜が明けてしまうので、それらの詳細についてはここでは説明しません!
5. まとめ
今回の作品群は、単に「ドガのポーズを真似してみた」だけではありません。
ドガが19世紀末に写真というテクノロジーから学んだ「視点の自由さ」や「飾らない瞬間の美しさ」を、現代のフォトグラファーとして光と構図を計算し尽くし、「写真作品としてドガへ送り返した」見事なオマージュなんです。
- 見る/見られるの非対称(覗き見視点)
- 遮蔽物を使った奥行きのある構図
- 一方向の光が作る、彫刻のような人体の美しさ
古典絵画の文脈を知った上で赤木友厚氏がレンズを向けた世界観を知ると、芸術ヌード写真の見方が一気に面白くなりますよね!
