「無事に終わった。その事実を前にして、安堵すべきか寂しがるべきか、僕の感情のピントは未だに定まっていない。いや、正確には『定まりきっていない』と言うべきだろう。何故なら僕たちの夏は、あのアジア美術館の八階、交流ギャラリーに置いてけぼりにされたままだからだ。とはいえ、カメラのストラップを外した肩が、少しだけ軽くなっているのもまた紛れもない事実なのだが。
改めまして、こんにちは。フォトグラファーの赤木友厚(あかぎともあつ)です。
2026年7月9日から14日までの6日間、福岡アジア美術館で開催された『ポートレート準備室グループ写真展(PPR展2026)』。


ポートレート準備室としては初となるこのグループ展は、連日多くの方に足を運んでいただき、大盛況のうちに幕を閉じることができました。今回は、無事に走り抜けたからこそ見えてきた「PPR展の熱気」を、具体的な数字と当日の様子を交えて振り返りとしてお届けします」
1. 6日間の来場者数記録:僕たちの声を聴きに来てくれた、1,036人の足跡
| 日程 | 来場者数 | 特記事項・イベント |
| 7月9日(木) | 115人 | 初日・平日のスタートから多くの方が来場 |
| 7月10日(金) | 118人 | 夜間開館(20:00まで)で仕事帰りの方も |
| 7月11日(土) | 313人 | 週末ピーク! ギャラリートーク①開催 |
| 7月12日(日) | 222人 | ギャラリートーク②開催 |
| 7月13日(月) | 124人 | 平日にもかかわらず途切れない熱気 |
| 7月14日(火) | 144人 | 最終日(16:00閉館)の駆け込みに感謝 |
| 合計 | 1,036人 | 大盛況のうちに閉幕! |
「1,036人。桁が一つ増えるだけで、急に現実味が薄れるような、けれど胸の奥がじんわりと熱くなるような、そんな圧倒的な数字だ。
ただの『写真好きの集まり』の独り言に、これだけ多くの人が耳を傾けてくれた。足を運んでくれた1,036人、その一人ひとりの眼差しが、僕たちの写真を完成させてくれた最後のピースだったのだと、今になって強く実感しています」
2. 1ミリのズレも許さない、ストイックな「額装と並び」の裏側
「僕たちのポートレート準備室は、2016年5月に発足して、この7月でとうとう110回目を数えた。普段はA4用紙にプリントして持ち寄るラフな勉強会だけれど、初の本格グループ展となれば話は別だ。
設営の日、僕たちは赤い水糸を頼りに、全員の写真が寸分の狂いもなく水平に、等間隔に並ぶよう、ミリ単位の調整を繰り返していた。
何度も言うけれど、PPR展のコンセプトは『写真サイズと点数の完全な統一』。レイアウトや額装の豪華さといった『お化粧』を極限まで引き算し、純粋に写真の力、被写体との関係性だけで勝負する試みだ。
それは間違いだ。いや、間違いというのも間違いで、正確には『同じ土俵に立たされることで、それぞれの歪なエゴがより際立つ、残酷で美しい実験室』だった。実際に壁に整列した45通りの世界は、驚くほどどれも似ていなくて、どれも強烈に『自分』を主張していたんだ」



3. 美術館のなかに突如現れた「特設スタジオ」という名の異空間
今回のPPR展で、1,036名の来場者の目を一際引いていたのが、展示スペースの傍らに堂々と鎮座していた本格的なライティング撮影スタジオでした。
「『展示された写真を静かに見つめる場所』。美術館に対するそんな既成概念を、僕たちはちょっとだけ悪戯っぽく壊してみることにした。
巨大な白いバックペーパーに、きれいに制御されたプロ仕様のストロボ機材、巨大なアンブレラ。なんと、会期中の会場内では、現役のカメラマンたちが実際にモデルをその場で撮影する『公開ライブシューティング』を連日開催していたんだ。


僕たちが普段、どんなふうに光を読み、モデルと対話し、一瞬の表情をハサミ(シャッター)で切り取っているのか。そのプロセスのすべてを剥き出しにして、観客の目の前で見せる。
初心者も、ベテランも、写真を撮る楽しさに取り憑かれた大人たちが集まって、ただ一つの『美』を追い求める。世代やキャリアを越えてノウハウが共有され、新しいインスピレーションが生まれていくその様子は、これ以上ないほどに刺激的なライブセッションだったよ」




4. ギャラリートーク。言葉で紡がれる「もうひとつのポートレート」
土曜日に313人、日曜日に222人と、週末の大きな熱気の中で開催された『ギャラリートーク(アーティストによる作品解説)』。

「展示されたポートレート作品を前にして、作家本人がマイクを握って語る。
『なぜ、この位置でシャッターを切ったのか』。
『なぜ、この表情を引き出さなければならなかったのか』。
『作品解説』という名の、言い訳と言葉のエンターテインメント。時には言葉に詰まりながら、時には熱っぽく語られるそのストーリーは、額縁の中の写真に『もうひとつのピント』を合わせるような、不思議な時間だった。
『そこに被写体がいたから。いや、被写体がそこにいて、僕の指が勝手に動いたから。正確には動かざるを得ない引力が発生したから』。
そんな言葉の迷宮に付き合ってくださった皆様、本当にありがとうございました」



重なり合う薄いファブリックのグラデーションと、しなやかなポージングが描き出す「存在の境界線」。徹底的に光と影をコントロールし、被写体の美しさをストイックに追求した、PPR展2026における赤木友厚のアートポートレート。
最後に:準備運動は終わり、また次の1枚へ
「写真を撮るという行為は、極めて個人的な独り言のようなものだ。
けれど、こうして『PPR展』という広場に持ち寄った瞬間、その独り言は、45の異なる声量で奏でられる1,036人への合唱(コーラス)へと変化する。
110回目を迎えた僕たちの『ポートレート準備室』の歩みは、ここで一度大きな区切りを迎えました。
でも、もちろん終わりなんかじゃない。
僕たちの露出も、ピントも、そして人生も。
いつだって『準備中』のままで、本番のシャッターを押し続けながら、これからも続いていくのだから。
ご来場いただいた1,036名のすべての皆様、そして奇跡的な時間を共にしてくれたすべてのモデル、ヘアメイク、フォトグラファーの仲間に、心からの感謝を。
また、次のファインダーの向こう側でお会いしましょう!」
※赤木が撮影したモデル様、ご来場者様









